登場人物
- 女:不問
- 男:不問
- 飛縁魔(女):妖怪
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約6分30秒(1970文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
特にありません。自由に演じてください。
本文
SE<雨音>
女 :雨、止まないね
男 :そうだな
女 :このまま、ずぅっとふり続いて、世界中が沈没しちゃったりして
男 :止まない雨はないよ
女 :……そうだね
SE<ガタ(椅子から立ち上がる音)>
女 :あ~あ、お花見、楽しみにしてたのに、この雨じゃあ、
桜の花もだいぶ流されちゃうかもね
男 :そうかもね。
でも、やろうぜ。お花見。
いいだろ? 花がなくたって。食べ物とお酒があれば楽しめるじゃん
女 :ん~。そういうとこだよな~。君は
男 :え? なにが?
女 :お花見はさぁ、花を見るものじゃない?
花がなかったら、それはただのピクニック。
私は、お花見がしたいの
男 :……そう、だな。
女 :納得してないでしょ?
男 :正直。
女 :ほれ。言ってみなよ。お得意の弁論。
男 :もう、そろそろ許してくれよ。何度も謝ったじゃないか。
もう、君が傷つくことは言わないって。
そもそも、俺にとっても君にとっても、さほど重要じゃないだろ。
お花見なんて
女 :……私はねぇ。春が好き。
満開の桜が辺り一面に並んでて、
遠くからみたらピンク色の雲が浮かんでるみたいで……。
想像するだけで、幸せな気持ちになる。
桜の季節は年に一回だけ。
私が80歳まで生きるとしたらあと何回みれるだろう?
一回だって、見逃したくないの
男 :……ごめん。でも、それは、知らなかったから
女 :嘘だよ
男 :……え?
女 :私、桜は嫌い。派手で、これ見よがしに咲いちゃってる感じが生理的に受け付けない。
好きな花はね、えっと、例えば、アスファルトの隅っこに咲いてる、
タンポポとかの方がよっぽど好きかな。健気で、応援したくなる
男 :ちょっと待ってよ。これ、何の話?
女 :君、私の事、興味ないでしょ
男 :……そんなことない
女 :そんなことあるよ。桜が好きじゃないって話もしたことあるし。
私がおかしなことを言っても、うんうん頷いて流してるだけ。
一緒にいても。……虚しいよ
男 :……そうか。そうだよな。ごめん。分かってあげられなくて。
でも、これからは……。
女 :これから? 『これから』が、いつまでもあると思わないで
男 :……それって、どういうことだ?
女 :さあ。自分で考えたら?
男 :ちょっと待て。……ささいな事じゃないか。
俺たち、相性、いいだろ? 一緒にいて落ち着くし、趣味も合うし。
そんな、どうでもいい、ささいな事で、その、
……別れるなんて、おかしいだろ
女 :そう? じゃあ、君の言う『ささいな事』が、私にとっては違ったってことじゃない?
男 :そんな……。
……あ、待って! 待ってくれよ! やり直させてくれ!
チャンスをくれ! なあ! 頼むよ!
……頼むよぉ……
男M :降りしきる雨の中。彼女は去っていった。
部屋の中に静寂が訪れる。
SE<ガタ(ソファから立ち上がる)>
男M :立ち上がると、ダイニングのテーブルの上にピアスが置いてあるのが見えた。
あれは、去年の誕生日に俺が彼女に渡したものだ。
男 :なにが、いけなかったんだろうな
男M :一人きりの部屋の中。
ふいに出た、間の抜けたセリフだけが、むなしく響いた。
SE<ピンポーン(チャイムの音)>
男 :……誰だよ。こんなときに……。
SE<ピンポーン(チャイムの音)>
男 :悪いけど、対応できる状態じゃないんだ
SE<ピンポーン(チャイムの音)>
男 :はぁ。……ゆっくり落ち込むこともできないのか
SE<ピンポーン(チャイムの音)>
男M :俺は、湧き上がる怒りをそのままに玄関へ向かった。
きっと荷物の配達か何かだろう。宗教の勧誘かもしれない。
まあ、八つ当たりできればなんでもいい。
何かちょっとした粗相でもあったら、それにつけこんで怒鳴りつけてやろう。
SE<ピンポーン(チャイムの音)>
SE<ガチャ(ドアを開ける)>
男 :はい
ひの :あの、すみません。……道に迷っちゃって
男M :そこには、見たこともないくらいの、ものすごい美人がいた。
俺は、懐に忍ばせていたクナイを手に取り、
美人の額を目がけてぶん投げた。
……よし、命中
ひの :ぐ、ぐがあぁああ。……なぜわかった?
男M :ふん! 不自然なんだよ!
俺の部屋にそんな美人が来るか!
大体、彼女が急に意味不明な別れ話を始めたところからおかしかったぜ!
ひの :ぐぅううう……。卑屈すぎるだろお前。
あと、あの別れ話は、結構ありがちだし、普通にお前が悪いぃぃいいい。
男 :黙れ! わけのわからんことを言うな!
お前、飛縁魔(ひのえんま)だろ?
お前をぶっ殺せば全部解決だぜ! ひゃっはー!
ひの :すごい勘違いをしているが、戦う他ないようだ……。私は別れ話とは関係ないのだが。
まあいいか……。
いかにも! 我こそが飛縁魔ぁ! 思い知れ! われの力をぉおお!!!
SE<きぃいいん(金属がぶつかる音)、ブシュ!(刺さる音)、どごぉお!(殴る音)>
男M :やっぱり俺は、こういうわかりやすい戦いが好きだぜ!
俺たちの戦いはこれからだ!
SE<きぃいいん(金属がぶつかる音)、ブシュ!(刺さる音)、どごぉお!(殴る音)>
END
