登場人物
- 交渉役(諸葛孔明)
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約6分(約1800文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
特にありません。自由に演じてください。
本文
今度は、あなたが来られたのですか……
御足労頂いたのに、申し訳ないが……
誰が来ても同じこと。
協力するつもりはありません。
そもそも
天候を予測する力であればあなたにも
十分過ぎるほどあるでしょう?
今、長江の北、
数十万の水軍が、烏林にたむろしていると聞きますが、
深い霧が出る日を見計らって、藁人形を満載した小舟、ニ十艘を仕立てて、
敵の水軍に近づかれたとか。
敵は、伏兵を恐れて、遠くから弓矢を散々に射かけ、
ハリネズミのようになった船の中から、兵士たちに
「十万本の矢を頂きかたじけない!!」
と叫ばせて帰ってきたとか…
そのように聞きましたよ?
……確かに北軍は十倍の兵力ですが、主力は、船に慣れていない者たちなので、急には攻めてくることはできない。
あなた好みの奇抜な策でもって
好きなだけ敵を打ち破ればよいでしょう……
は?
麦を三日で?
唐突に何をおっしゃるのです
……数日で麦を作れるはずがありませぬ。
ふざけておられるのですか?
戦争が起きれば、一日…ぃや、時には数時間かからずに、万単位の人間が死ぬが、
麦を一粒収穫するのは
少なくとも数か月はかかる……
何かを育てるというのは、そういうことだ。
それを食して人間は、生きている……
だからこそ……父、于吉は、記録を取り始めたのだ。
地形を調べ、毎日、いろいろな場所で
星座や太陽の位置、暑さ、寒さ、天気
風の向きや強さ、それを蓄積して、共通する事柄を整理すれば、前もって天候を予測することができる。
天候が予測できれば、災害に備えられるばかりでなく、農産物も漁獲物も、どれだけ増やせることか。
そのためだけだった。
それなのに……
父は、この地域の先代の領主である孫策に
妖術で人々を惑わす者として、処刑された!
……恨みこそあれ、協力する筋合いなど……
…………そうですね……
ひっそりと、私が測定を続けて、気候の情報を流しているのを、
周瑜殿も、孫権殿も、黙認してくれているのは、うっすらと感じています……
はぁ……
……あなたの奥方様?
どんなお方なのかは、まったく存じませぬが
お偉い方の奥方ならば、さぞやお美しい方なのでございましょう。
は?
……赤毛に……小麦色の肌……?
それは……
……そうですか……
奴隷商人のもとにいた……
異民族の子どもだったと……
地域が荒廃すれば……
弱い者は死に
生き残っても
奴隷のようにこき使われ
売り飛ばされる者も……
どこの国や地域にいても……
ぃや、しかしながら……
火攻め……
この地域の冬は、西北の季節風が吹く。
その中で、火攻めを用いようとしても、
敵ではなく、味方に燃え移ってしまう。
……例外?
西北の風ではない風が吹くとき……?
ふぅむ……
漁師も農民も、この地域で長く暮らした経験のある者なら、
この時期でも、時折、東南の強風が吹くことがあるのを知っております。
私でなくとも
それを、予測することができる者はおりましょう。
……間違いのない正確な……日時……
我が父、于吉は、この経験と知識を、この地域の人々の幸せのために、培ってきたのです
なのに……これを、敵兵とはいえ
数十万もの人を焼き殺すのに使えと
あなたはそうおっしゃられるのですか?
……人は殺しあったり
命の売り買いをしたり……
……いつになったら
そのようなことをしないで済む
安心と笑いに満ちた世の中になるのでしょうか……
■
歴史書、三国志によると、今から、約1800年前、西暦208年、冬、古代中国において、
北方を押さえていた曹操という者が、
数十万の兵力を従えて、中国南部を拠点としていた孫権・劉備と戦った。
この戦いは「赤壁の戦い」と呼ばれている。
戦いは、主に長江を挟んで水上で行われた。
船での戦いに慣れていない曹操軍だったが、孫・劉の連合軍の10倍の兵力を誇り
曹操によって、一気に天下が統一されるかと思われた。
しかし、凄まじい兵力差があるのにも関わらず、孫権軍の火攻めによって、曹操軍は大きな打撃を受けて、敗退したと伝わっている。
この地域の冬は、西北の風が吹くことが多く、この風向きは、火攻めには、不向きで、火攻めが行える東南の風が吹くことは少ない。
孫権軍は、どう東南の風を予測し、曹操軍に火攻めをしかけたのかということについては、様々な説がある。
Spetial Thanks! 人外薙魔様