登場人物
- 本橋 光里(女):本が好きでやや内気なセミロングの少女。眼鏡をかけている。夏灯と雫久とは幼稚園からの幼馴染みで付き合いが長い。雫久に片思いしている。
- 草間 夏灯(女):ノリのいいポニーテールの少女。テンションによって様々な口調やキャラを使い分けており、その場を明るくするムードメーカー。少々がさつなところもあるが、実は成績もいい優等生。
- 山埜 しぐれ(女):東京から引っ越してきた黒髪ロングの転校生。モデルのように整った容姿と、白く透き通った肌をしており、人目を引く。父子家庭で育ったためしっかりしているのも相まって、完璧女子と思われがち。
- 青葉 雫久(男):光里、夏灯の幼馴染み。中学から始めた陸上にのめりこみ、日々真面目に練習している。
- 先生(不問):二年二組担任。 ※男性のつもりで書いてますが、口調を変えたり男口調の女性として女性の方が演じていただくのも可。兼ね役可。
- 男子(不問):二年二組クラスメイト。 ※1つしかセリフがありません。兼ね役可
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約44分(13185文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
「セミ」というテーマで書いた作品です。光里の恋愛を軸にしている物語ではありますが、どちらかというと、各キャラクターの心の動きにフォーカスし、人間の持つドラマ性を描くつもりで書きました。
十全に表現できたとは言えないかもしれませんが、個々のセリフに込められた心情、思惑を想像しながら演じていただければと思います。
また、SEやBGMなどはあくまでイメージであり、入れるタイミングなどは変えていただいて構いません。そもそもBGMはふんわりとした表記しかしておりませんので、演じる方の演技にあった音をチョイスしていただくとよいかと思います。長いですが、比較的細かくシーンが別れておりますので、少しずつやってみるなど、負担にならない範囲で楽しんでいただければ幸いです。一部だけの音声化等も問題ありません。
なお、本作は心情を描きたかったという特性上、小説版も執筆しております。小説とボイスドラマでは性質が異なるため、話の流れやセリフなども違う部分がありますが、ご興味あればそちらもあわせてご一読ください。
本文
◆シーン:職員室前
SE:ひぐらしの鳴き声
SE:引き戸を開ける
光里「それじゃあ、失礼します」
先生「おう。放課後にありがとな、本橋。明日から、よろしく頼む」
光里「はい。あの、頑張ります」
先生「助かる。気をつけて帰れよー」
光里「はい。失礼しました」
SE:引き戸を閉める
光里「ふぅ……あったかい」
BGM:夏の夕暮れ
夏灯「おー、出てきた出てきた。おつかれ、ひかり」
光里「なっちゃん!? どうして……教室で待ってたんじゃ」
夏灯「思ったより帰ってこないから、様子見にいこうかなって。しばらくここで待ってた。結構かかったねぇ」
光里「うん、思ったより色々頼まれちゃって。エアコンの近くだったから、ちょっと冷えちゃった」
夏灯「あらら、平気?」
光里「うん。……あ、鞄ありがと」
夏灯「おうよ。光里の鞄重かったぁ」
光里「ごめんごめん。今日宿題多くて、教科書とか色々持って帰らなきゃいけないから……って、それはなっちゃんも同じでしょ? 同じクラスなんだから」
夏灯「あたしは持って帰るのヤだから必要なページだけ写真撮った」
光里「え、かしこい」
夏灯「まーね! 頭脳って言うのはこうやって使うのだよひかりクン。ほんとは学校が全部の教科書をタブレットで見られるようにしてくれればいーんだけどさ、こんな田舎じゃ予算ないもんなあ。セルフ電子化ってやつよ」
光里「なっちゃんってほんと頭良いよね」
夏灯「ふっふっふ、まあそれほどでもある」
光里「人は見かけによらないなあ」
夏灯「なにおぅ! どっからどう見ても知的美少女やろがい!」
光里&夏灯「「あはは!」」
SE:学校のチャイム
夏灯「おっと、もうこんな時間か。この時間のチャイム、久々に聞いたぜ」
光里「ごめんね、待たせて」
夏灯「んーん。あたしが待ちたくて待ってただけだから。ひとりで帰るのもつまんないしさ」
光里「そういえば待ってる間、何かしてた?」
夏灯「いーや、なーんも。だって放課後はクーラー点けといてくんないから暑いんだもん。やる気でないから、ぼーっとしてた。窓の外見てたけど、この炎天下の中、運動部はよくやるよねぇ。ほら、『あいつ』も今走ってるよ」
光里「え?」
SE:運動部のかけ声(少し前から裏で流しておき、このタイミングで音量をやや上げる演出でも良い)
光里「……あ、ほんとだ」
夏灯「おやおや~? さすがひかりさん、さすがのスピードですねぇ。あんな豆粒みたいな後ろ姿なのに、一瞬で雫久を見つけるなんて」
光里「あっ、いや違うの! これはたまたま……!」
夏灯「いやあ、恋する乙女は可愛いですなあ。なーんであいつもこれに気づけないかね。まあ、あいつの陸上バカは今に始まったことじゃないけど」
光里「もう、なっちゃん!」
SE:腕を振る
◇光里、照れ隠しで夏灯を叩こうとする
夏灯「おおっと!」
SE:ジャンプ
SE:足音(数歩)
◇夏灯、光里の腕を軽やかに避ける
夏灯「あはは! ひかりのかわいいパンチに当たる夏灯さんじゃないぜ。(数歩先から声をかける)ほら、雫久に見とれてないで帰ろうぜひかりー!」
光里「あ、待ってよもー!」
SE:廊下を走る音
SE:ひぐらしの鳴き声
◇SE、BGMフェードアウト
◆シーン:通学路(帰路)
SE:車の音
SE:自転車のベル
SE:自転車の走る音
BGM:日常
夏灯「うそっ! こんな時期に転校生!?」
光里「ちょ……声がおっきいよ、なっちゃん」
夏灯「あ、ごめんびっくりしちゃって。いやーまさかまさかですなあ。全然想像もしてなかった」
光里「まあ、そうだよね。私もびっくりした。……でね? 実は、その転校生の案内役というかフォロー役を、私にお願いしたいって言われて」
夏灯「なーるほど、それでわざわざ呼び出されたってわけか」
光里「うん。なんで私に、って感じなんだけど」
夏灯「いーや、むしろ良いチョイスだね。あえて学級委員じゃなく、図書委員であるひかりを選ぶとは……悪くない、悪くないぞ先生。褒めてやろう」
光里「なんで上からなの……」
夏灯「やはり、モテそうだという理由だけで学級委員になった田中には任せられんか。正直私もそう思う」
光里「いや、そんなことは言ってなかったからね!? 単純に、転校生が女の子だから、同性のほうがいいだろうって」
夏灯「なにぃ!? 転校生は女子ぃ!?」
光里「う、うん……」
夏灯「うずく……うずくぞ……あたしの中のおじさんがうずく!」
光里「なっちゃん……」
夏灯「そんな呆れた顔すんなよー。ひかりだって楽しみではあるでしょ?」
光里「それは……まあ。仲良くなれたらいいなあとは思うよ。東京からくるらしいから、色々話してみたいし」
夏灯「なにぃ!? 転校生は東京!?」
光里「転校生は人間だよなっちゃん……」
夏灯「それはまあ遠くからこんな田舎までようお越しになりまして……」
光里「ツッコミが追いつかない……」
夏灯「ふっふっふ、おじさんになったかと思いきや、おばあさんにもなる。つかみ所のない女、それが草間夏灯なのだ! ……とまあ、冗談はこれくらいにして。東京からの転校生かあ……俄然明日が待ち遠しくなってきたね!」
光里「うん。正直、私だけだとうまく話せるか分かんないし、なっちゃんにも助けてほしい、かな」
夏灯「あたぼうよ! ひかりがフォロー役ならあたしもフォロー役だ! 一緒に仲良くなってこうぜ!」
光里「うん!」
SE:車の音
SE:ひぐらしの鳴き声
◇SE、BGMフェードアウト
◆シーン:教室
SE:すずめの鳴き声
SE:教室の喧噪
SE:学校のチャイム
SE:引き戸を開ける
先生「おーしみんな席つけー」
SE:椅子を引く音など
先生「朝のホームルームを始めるが、今日は、みんなにお知らせがある。いいか、絶対に騒ぐなよ? 他のクラスの迷惑になるからな? これはフリじゃない。いいな? ……よし、じゃあ改めてだが、実は今日から、このクラスにひとり、仲間が加わることになった。――山埜さん、入ってきて」
SE:引き戸を開ける
SE:足音
先生「転校生の、山埜しぐれさんだ。山埜、黒板に名前を。それから自己紹介を頼む」
山埜「はい」
SE:黒板に文字を書く
山埜「親の転勤で、東京から転校して来ました。山埜しぐれです。よろしくお願いします」
◇間(数秒)
先生「……おいおいみんな、騒がないのは偉いが拍手くらいはしてやれ?」
SE:拍手(まばらな拍手から全体へ広がる)
先生「ごめんな山埜。俺が念を押し過ぎたせいで変な感じになってしまった」
山埜「いえ、大丈夫です」
先生「まあとりあえず……みんな! そんなわけだから、今日から山埜と仲良くしてやってくれ。そして山埜! 最初は分からないことばかりだと思うが、徐々になじんでくれたらと思う。しばらくの間は、本橋にフォロー役を頼んであるから、まずは本橋を頼ってみてくれ。――本橋!」
光里「は、はい!」
SE:椅子から立ち上がる
先生「山埜、あれが本橋だ。本橋、頼むな?」
光里「は、はい……」
先生「よーし、じゃあホームルーム続けるぞー。本橋、ありがとな。座っていい。山埜は、悪いが少しだけ廊下で待っててくれ。このあと職員室で他の先生にも紹介しよう。それじゃ連絡事項だが――」
◇フェードアウト
SE:学校のチャイム
BGM:日常(朝)
夏灯「いやー、やばいわ。あれはやばい」
SE:教室の喧噪
夏灯「予想以上の美少女が来ちゃったなー。ね、ひかり」
光里「う、うん。すごい、なんていうか、綺麗な人だったね」
夏灯「いやーあれは反則でしょー。見てよ男子共の盛り上がり。……いや女子もすごいか」
光里「なんというか、憧れちゃうような雰囲気があったもんね。髪もつやつやだったし」
夏灯「もーほんと、あたしたちと同級生? って感じ。少なくともうちのお姉ちゃんより大人っぽいね」
光里「あはは……秋音さんも十分大人っぽいと思うけど……高二でしょう?」
夏灯「いーや! なんていうの? こう、オーラが違うね。立ちのぼる上品さ? あんなのうちのお姉ちゃんには絶対ない。(光里の背後に向かって)――ねぇ雫久、あんたもそう思うよねー?」
光里「な、なっちゃん!?」
夏灯「まあまあ、いーからいーから。――ねぇ雫久ー?」
男子「――おい青葉、草間が呼んでんぞ」 ※パンを振るなどして少し離れたところからしゃべっている感を出す
雫久「ん? おお、マジか」 ※同上
SE:足音
◇雫久、光里たちのもとに来る
雫久「どした、なつひ。何か呼んだ?」
夏灯「おー呼んだ呼んだ。今、ひかりと山埜さんについて話しててさー」
雫久「おう」
夏灯「うちのお姉ちゃんと山埜さん、どっちが可愛いかって話になったわけよ。どう? あんた的にはどっちが好み?」
光里「ちょっ、なっちゃんそんな話じゃ……」
夏灯「(小声)いーのいーの! だってひかり、気になるでしょ? こいつが山埜さんをどう思ったか」
光里「(小声)それは……」
雫久「おいなつひ?」
夏灯「あーごめんごめんこっちの話。で、どうよ? どっちが可愛い?」
雫久「いや、なんつーか、あんま変なことばっか言うなよな。比べるのとか、秋音さんにも転校生にも悪いだろ」
夏灯「んもう、そういう真面目なのは良いんだって。ちょっとした雑談の種じゃんか」
雫久「それでひかりを振り回すのは違うだろ。ひかりも困ってるし。な、ひかり」
光里「しぃくん……」
夏灯「ほほー! つまりあんたは、お姉ちゃんよりも山埜さんよりもひかりが良いと? そっかそっかー、そうだったかぁ!」
雫久「バカ、お前っ――」
光里「なっちゃん!!」
◇BGM、SE停止
山埜「あの、お話し中ごめんなさい。本橋、さん? 少しだけ、大丈夫ですか?」
BGM:やや緊張感の漂う曲
光里「や、山埜さん……」
山埜「あ……えっと……あの、ほんと、ごめんなさい。邪魔しちゃって」
光里「あ……ううん、こちらこそごめんなさい。えっと……どうかしましたか?」
山埜「あの、職員室から今戻ってきたんですけど、先生が、私の席の場所は本橋さんに聞いてって言っていたので……あとロッカーも」
光里「ああ、そっか! そうだったね、ごめんなさい」
山埜「いえ……こちらこそごめんなさい。お話中に」
光里&山埜「「(言葉にならない気まずそうな声)」」
◇BGM停止
夏灯「なんだいなんだいお二人さん、さっきから謝ってばっかりじゃあないか」
BGM:ポップで勢いのある
夏灯「こういうときこそあたしの出番! ちょいと一瞬失礼するぜぇ」
光里「なっちゃん……!」
夏灯「やあやあようこそ山埜さん。あたしの名前は草間夏灯! この子、本橋光里の幼馴染みで大親友!」
SE:デデン(和太鼓)
夏灯「で、こいつが腐れ縁の青葉雫久。まあこいつは覚えなくていいや」
雫久「おいこら雑ぅ! ……あーえっと、青葉雫久だ。よろしく」
山埜「あ、はい……よろしくお願いします。山埜しぐれです」
夏灯「よろしくしぐれー!」
雫久「お前は距離感の詰め方どうなってんだ!」
SE:ポカッ(軽く叩く)
夏灯「あいたー!? ちょっとちょっと、女の子の頭を殴るなんてひどいんじゃあないかい?」
雫久「うるせぇ! 山埜さんが困ってんだろ」
山埜「――ふふっ、仲良いんですね」
BGM:綺麗
山埜「正直、ちょっと緊張してたんですけど、おかげでほぐれてきました。ありがとうございます。えっと、草間さん、青葉くん」
夏灯「そいつぁ良かった。あたしたち、幼稚園からの幼馴染みなのよ。てなわけで、なんかあったら、あたしにも遠慮なく言って。ひかりと一緒に力になるからさ」
山埜「はい、ありがとうございます。――本橋さんも、改めて、よろしくお願いします」
光里「う、うん。よろしくね、山埜さん」
夏灯「よっし一件落着! それでなんだっけ、机とロッカーだっけ?」
山埜「あ、はい!」
夏灯「ひかりー、なんか聞いてる?」
光里「あ、うん! 山埜さん、山埜さんの机はね……」
SE:教室の喧噪
◇BGM、SEフェードアウト
◆シーン:教室(二週間後)
SE:ミンミンゼミの鳴き声
山埜「えっ、次移動教室なの? 理科室って何階だっけ? ……ありがとー! 案内ほんとに助かる!」
SE:引き戸を開ける(少し遠くで)
BGM:日常(ほのぼの)
夏灯「……いやあ、しぐれ殿、二週間ですっかり馴染みましたな」
光里「だねぇ。なんていうかこう、親しみやすくなったよね」
夏灯「フランクさが増して、より一層笑顔がまぶしい美少女! てっきり清楚な大和撫子な感じだと思ったんだけど、明るいし冗談も通じるし……こりゃ本格的にまずいな」
光里「まずいの?」
夏灯「清楚で明るい美少女だなんて、キャラが夏灯ちゃんと丸被りだ!」
光里「あはは……」
夏灯「まーおかげで男子共は距離を取ってるっていうか、見るだけで精一杯って感じだねぇ」
光里「まあ、山埜さん。綺麗だもんね」
夏灯「うーむ、キョドりながらチラチラ見てるの、正直きしょいな」
光里「な、なっちゃん! オブラート!」
夏灯「とはいえ、他ならぬしぐれ自身が気にしてないからなあ」
光里「そうだよね。昨日のお昼だっけ? 確か――」
山埜(回想)『んー、まあ男子ってそんなものじゃない?』
光里「――って言ってたもんね」
夏灯「ああ、ありゃプロだね。プロの美人だ。慣れてんだろうなあ、注目されるの。おかげで男子の中でしぐれと普通にしゃべるのは、雫久くらいかー」
光里「しぃくん……」
BGM:切ない
光里「しぃくん、山埜さんのことどう思ってるのかな……」
夏灯「おーどした? そういうの口に出すの珍しいじゃん。雫久がしぐれにコロっといっちゃわないか心配?」
光里「心配っていうか……うん、なんだろうね、これ。不安、なのかな……」
夏灯「大丈夫だよ。確かにしぐれは美人だけどさ、転校生以上に思ってないって」
光里「そう、かな……」
夏灯「そうだよ! あいつがしぐれと普通に話すって言ったって、ちょっとしたフォローくらいじゃん? 最低限って感じだし。多分、あたし達と一緒に自己紹介したから、何かあったら自分も助けなきゃとか思ってるんじゃない? ひかりも知ってるでしょ、あいつが何事にもまっすぐなの」
光里「うん……」
夏灯「……それでも不安?」
光里「……うん、ごめん」
夏灯「いいって! 謝ることじゃないでしょ。こういうのって理屈じゃないしね。私も、気持ちは分かるよ」
光里「なっちゃん……」
夏灯「それでも言いたいのは、あんまり思い詰めないでねってこと。やっぱり、ひかりには元気でいてほしいからさ」
光里「そう、だね。……うん、ありがとうなっちゃん……!」
夏灯「へへっ、どーいたしまして。まー、あいつは陸上一筋の陸上バカだし? 大丈夫でしょ! 他のものなんて、そうそう目に入らないって。ね?」
光里「うん!」
夏灯「よっしゃ一段落! あたしたちも理科室いこうぜぇ!」
光里「うん!」
SE:椅子から立ち上がる
SE:足音
◇BGM、SEフェードアウト
◆シーン:通学路(帰路)
SE:学校のチャイム
SE:教室の喧噪(フェードアウト)
◇外に移動
SE:車の音
SE:自転車の音
SE:カラスの鳴き声
BGM:夕暮れ
SE:足音
夏灯「あれ、しぐれ。その日焼け止め、見たことなくね? 新しいの買ったの?」
山埜「うん。いつも見てる動画でおすすめしてたから」
夏灯「いいなー。どう、効果ある? ……って、相変わらず真っ白だし、聞くまでもないか。ほんと肌綺麗だよねぇ」
山埜「白いだけだよ。日焼けすると真っ赤になっちゃって大変で。それもあって、日焼け止めにはこだわってるんだけどね」
夏灯「ほほう、こだわりの逸品と申すか。……もしかして、お値段のほうも結構お高め?」
山埜「んー、まあ、うん。わりと」
夏灯「まじかー。千円? 二千円? ……え、三千円!? 高級じゃーん! やば! ひかり、これ三千円だって!」
光里「うん、すごいね。さすが山埜さん」
夏灯「薄々思ってたけど、しぐれん家ってもしやブルジョワジー?」
山埜「ううん、そんなことないよ。ただ、転勤してちょっと偉くなったみたいで。欲しい物あったら買ってやるぞって、お父さんが」
夏灯「まじでー? いいなー!」
山埜「多分、引っ越しになっちゃったこと、お父さんなりに気にしてるんだと思う」
夏灯「あー、まあ、友達と離ればなれになって、こんな田舎に来るんじゃなあ。申し訳なさも感じるか。実際東京に比べたら、色々不便でしょ、やっぱ」
山埜「うーん、まあ、コンビニもスーパーも近くにないのはちょっと不便かな」
夏灯「だよなあ」
山埜「でも私、こっちも結構気に入ってるよ? 静かだし、人多くないし、空気はおいしいし」
夏灯「それに、超絶美少女夏灯ちゃんもいるしなあ」
山埜「あ、それもあったね!」
夏灯「はっはっは! はー……しぐれ相手だとこのボケ虚しいな」
山埜「ボケじゃないでしょ。なつひ、かわいいし」
夏灯「くぅッ! この天然美少女が! そんな風に見つめられたら惚れちまいますよっ! もー、ひかりも何か言ってやって!」
光里「……」
夏灯「……ひかり?」
◇BGM停止
SE:ひぐらしの鳴き声
SE:風で木が揺れる
夏灯「……ひかり、大丈夫?」
光里「んっ……あっ! なに? なっちゃん」
夏灯「いや……どした? 何か考え事?」
光里「あっ、ううん! ごめん、ぼーっとしてて……」
山埜「ひかり、もしかして、気分悪い? 水分とる? 私、お茶余ってるよ」
光里「あーいや、違うの! その……そうだ、ノート持って帰ってきたかなーって一瞬不安になっちゃって!」
山埜「……そう?」
夏灯「いいのかーひかり。しぐれと間接キスできる大チャンスだぜぇ?」
光里「もう、なっちゃん! ほんとに大丈夫だから。山埜さんもありがとね」
山埜「うん。無理は、しないでね?」
光里「うん。ほんと、ありがとう」
BGM:穏やか
夏灯「そんじゃ、気を取り直して帰りますか。何の話だっけ?」
山埜「なつひがかわいいって話だね」
夏灯「おわー! はずい話だったあ! 自分で言うのはいいけど人から言われるのは照れんぜ!」
◇上のセリフの途中あたりからフェードアウト
山埜「あはは!」
【転換】
SE:ひぐらしの鳴き声(フェードイン)
SE:足音
BGM:夕暮れ
夏灯「はー、今日も勉強になったな。ほんとしぐれって、化粧品に詳しいねぇ」
山埜「好きなだけだよ。動画見てたら自然と覚えちゃって」
夏灯「もっと聞いてたいけど、ここでお別れかー」
山埜「良かったら、今度どこかでお出かけ行こう? こっち来てから、遠出ってしたことないし」
夏灯「お、いいねぇ! いこういこう! 楽しみだな、ひかり!」
光里「うん。お年玉の残りもあるし、私も色々買いたいな」
夏灯「なんと! もう七月なのにまだお年玉が残っていると申すか!」
光里「うん。私、読書くらいしか趣味ないから、買うとしたら本なんだけど……本は結構お父さんがお金を出してくれるんだ。読書はいいことだ、って」
夏灯「はー! なんてこった! しぐれん家といい、なんでそんなにお父さんが優しいんだ? はぁーあ、あたしは何とか臨時のお小遣いでもねだってみるかー」
山埜「日程はまた相談しようね」
夏灯「おう! じゃあ、名残惜しいけどそろそろ帰りますかねぇ」
山埜「そうしよっか。……あ、ごめん、そういえばなんだけど、最後に私から、いい?」
夏灯「お? どした? 大事な話?」
山埜「ううん、単に言うのを忘れてた話。また忘れちゃうかもしれないし先に言っておくんだけど、明日はちょっと用事があって、一緒に帰れないと思う」
光里&夏灯「「用事?」」
山埜「うん。だから、先帰ってていいからね」
夏灯「分かった……けど、用事って? あ、聞いちゃダメなやつならいいんだけど、珍しいなーと思って。なに、先生に呼び出されたとか?」
山埜「ううん、実は、部活動見学なの」
光里&夏灯「「部活動見学?」」
山埜「――ふふっ……またハモった。ほんと、ふたりは仲良しだね」
夏灯「まーあたしとひかりくらいになるとねぇ。以心伝心、阿吽之息ってやつかな。でも意外。毎日一緒に帰ってたから、てっきり部活なんてやるつもりないのかと思ってたんだけど。気になる部活があるんだ?」
山埜「あーうん、実は、前の学校でも部活に入っててね? こっちでもすぐ入るつもりだったんだけど……ほら私、転校してくる時期が中途半端だったじゃない? だから、先生から、もう七月だし、部活やるならキリよく二学期からでもいいんじゃないか? って言われてたんだよ。詳しく聞いたら、夏の合宿とかあるけど、宿泊先の関係で急に人増やせない、とか、事情もあるらしくて」
光里「あ、そうだったんだ。なるほどね」
夏灯「およ? てことはしぐれ、運動部? 部活って言っても、てっきり家庭科部とかかと思ったのに。エプロン似合いそうなのになあ」
山埜「あはは! 色が白いからかなあ。文化部っぽいとはよく言われる。だけど残念、運動部でしたー」
夏灯「(何かを察して警戒しつつも平静を装う感じで)……へー。ちなみに何部?」
◇BGM停止
SE:木のざわめき
山埜「陸上部だよ。私、前の学校でハードルやってたの」
【転換】
SE:カラスの鳴き声
SE:木が風で揺れる
BGM:切なくて不穏
◇光里&夏灯、少し気まずそうに無言で歩く
SE:足音
光里「(声にならない声。漏れる息)」
夏灯「(声にならない声。漏れる息)」
夏灯「あー……意外、だったね。まさかしぐれが陸上部なんて」
◇光里、無言。しばらく返答がないまま、夏灯が一方的に話す
夏灯「全く日焼けしてないし、髪も長いし、傷んでないし、そんな雰囲気は全く無かったんだけどなあ。美少女すぎて気づけなかったぜ」
光里「……」
夏灯「あのルックスじゃ、全国大会とか出ようもんなら、注目間違いなしだなあ。うちの学校が有名になったらどうするよ、ひかり」
光里「……」
夏灯「あー……うん、ごめん。それどころじゃないか。だよね」
◇BGM、SE停止
光里「――なっちゃん、私どうしよう……」
夏灯「うん」
光里「私……怖い……」
夏灯「……うん」
光里「しぃくんと山埜さんが仲良くなっちゃうのが怖いよ!」
◇光里、感情の発露
BGM:悲しくて切ない
光里「うっ……くっ……うああああ……」
◇光里、堪えきれなくなって涙をこぼす
夏灯「うん……そうだよね」
◇夏灯、光里を抱きしめる。光里、泣き続ける(くぐもった声)
夏灯「大丈夫。あたしがいるからね――」
◇光里、泣き続ける
SE:心音(かすかに)
◇BGM、SE、フェードアウト
◆シーン:寝室(光里の部屋)
SE:ドアを開ける
夏灯「あーさっぱりしたしいっぱい食べたー! おばさん、相変わらず料理うまいね」
光里「そう? お母さん、喜ぶよ」
夏灯「あとは寝るだけかー。ひかりと寝るのも久しぶりかも」
光里「そうかもね。そういえば、中学に上がってから、お泊まり会したことなかったかも。――電気消すよー?」
夏灯「はーい」
SE:スイッチを切る
SE:ふとんに入る
◇以降、寝ながら会話するため少し小声
夏灯「はー、エアコンが効いた部屋でふとんにくるまる幸せ……」
光里「そっか。なっちゃんの部屋、エアコンついてないもんね。普段暑い中で寝てるの?」
夏灯「おうともさー。まあもう少しして、本格的にやばいってなったらお姉ちゃんの部屋に避難するつもり。お姉ちゃん、バイト代でエアコン買って部屋につけたから」
光里「へーさすが高校生。私もバイト、してみたいなあ」
夏灯「バイトするならひかりは本屋一択。これは譲れない」
光里「えー? まあ確かに働いてみたいけど……本屋だけ?」
夏灯「めがね、黒髪、高校の制服、の上に本屋のエプロン。最高だね」
光里「あはは。近所のスーパーだってエプロンだよ?」
夏灯「いーや! 本屋だね。本屋しかないね」
光里「何そのこだわり」
SE:衣擦れ(布団の中で動く)
夏灯「――ねぇ、ひかり。『鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす』ってことわざ、知ってる?」
光里「え、ううん。知らないけど……いきなりだね?」
夏灯「いやー、あはは。本の話になったからさ。ふと思い出して」
光里「うん」
夏灯「これはね、あたしが昔、辞書でたまたま見つけたことわざなんだ。表にあらわすものよりも、内に秘めているもののほうが、はるかに切実だ――って意味。蛍は鳴かないけれど、その強い想いで身を焦がしながら光ってるんだぞ、ってこと」
光里「なんか、素敵なことわざだね」
夏灯「そうでしょ? だから印象に残ってたんだけど、……あたしね、これ、ひかりのことだ、って思うの」
光里「……私?」
夏灯「うん。ひかりは、蛍だと思う」
光里「……私が、しぃくんのことで悩んでるから?」
夏灯「そう。ひかりは今、悩んでる。雫久と、しぐれのことで。それこそ、身を焦がすくらい想いが強いからこそ、苦しんでる」
光里「……」
夏灯「あたし、それだけ強く誰かのことを思えるって、とても素敵なことだと思うんだ。確かに、人の目を引きやすいしぐれと比べたら、ひかりは目立たないのかもしれない。でも、絶対いつか、その輝きに気付いてくれる誰かが出てくる。……ううん、誰かじゃない。雫久が気付いてくれるって、あたしはそう信じてるんだ。――誰よりも、ふたりを近くで見てきた幼馴染みとして」
光里「そう……かな」
夏灯「そうさ。だって、あたしは気付けてる。あたしは、ひかりがどうしようもく気持ちを燃やしているのを知ってる。だから、同じだけ一緒にいる雫久が気付けないわけないよ。ちょっと、気付くのが遅いだけ。あいつ、鈍感陸上バカだから。ね?」
光里「うーん……」
夏灯「納得いかない?」
光里「うーん……まあ、ちょっと。あっ、ごめんね? なっちゃんの気持ちは嬉しいし、気付いてくれて、素敵だって言ってくれる優しさが、あったかい。でも……だめなの」
夏灯「だめ?」
光里「どうしても、今の私が蛍みたいに、綺麗に輝けているとは思えなくて」
夏灯「……どうして?」
光里「だって……」
◇一呼吸おく(自分の嫌な面を白状する覚悟を決める)
光里「だって、私が持ってるものって、全然綺麗じゃない気がするから」
BGM:悲しい
◇以降、しばらく光里の独白
光里「今日、私、まさか山埜さんがしぃくんと同じ陸上部に、ってびっくりしたのもあって、一気に色々考えちゃって……怖くなって泣いちゃったじゃない? あのあと、なっちゃんのおかげで少し冷静になれて……で、思ったんだ。……なんて自分勝手な悩みなんだろうって」
光里「山埜さんは、転校前からやっていたハードルを続けたくて、陸上部に入るだけ。しぃくんも、自分の記録を伸ばすために、毎日部活動を頑張っているだけ。そのふたりの想いの中に、お互いのことなんて少しも入ってない。ふたりは、ただ、やりたいことを実現するために陸上部を選んだだけ」
光里「それなのに、私はそのふたりを勝手に近づけた。勝手に近づけて……泣いた」
光里「わかる? なっちゃん。私は、同じ部活になるってだけで、勝手にふたりを近づけて、勝手に嫉妬して、勝手に……泣いたんだ。しぃくんが山埜さんを好きって言ったわけでも、山埜さんがしぃくんを好きって言ったわけでもない。ただ『そうなるかも』ってだけで、怖くて、怖くて……泣いた」
光里「だって、私には何もないから。私は単に、幼馴染みってだけ。長く一緒にいるってだけ。自分が選ばれる努力なんて何もできてないし、この気持ちを、伝える勇気すら持てない。ただ震えて、怖がるだけ。うらやましがるだけ。悔しがるだけ。こんなの……こんなの……蛍だなんて言える……? 言えないよ……!」
◇光里、涙する
SE:衣擦れ(光里の布団に入って彼女を抱きしめる)
光里「なっちゃん……」
夏灯「――やっぱり、ひかりは蛍だよ」
SE:心音(かすかに)
夏灯「自分勝手な悩み? 好きな男の子の近くに、可愛い女の子が現れたら不安になる。そんなの、当たり前じゃんか。何も卑下する必要なんてない。綺麗じゃないなんて、思う必要ない。そうやって、どこまでもどこまでも、苦しみながら人を想うから蛍なんだ。――ひかり、それが、身を焦がすってことなんだよ」
光里「なっちゃん……」
夏灯「しかも相手はしぐれなんていうチートだぜ? あたしがひかりの立場でも、勝てるわけないって思っちゃうさ。嫉妬するのも、怖くなるのも、普通普通」
光里「そう、かな……ほんと……?」
夏灯「ほんとさ。そりゃ、あたしも美少女だけど、残念ながらしぐれにゃ負ける。そんな相手が恋敵になるって考えたら、落ち込みもするさ。……でもさ、それでもやめらんないじゃん? どこまでもぐるぐる考えちゃうじゃん? ……それがさ、多分、『好き』ってことなんだよ。……そう思わない?」
光里「うん……思う」
夏灯「でしょ?」
「うん……うん……思うよ、なっちゃん……。やめらんない……私、しぃくんが好きな気持ち、やめらんない……!」
夏灯「それでこそひかりだ。それでいいんだよ。……さ、とりあえず今日はもう寝ようぜ? このまま一晩中、抱きしめといてやるからさ」
光里「うん……なっちゃん、なんかかっこいいね……」
夏灯「おや、知らなかったのかい? 夏灯サマは最高にかっこよくもあるスーパー美少女なんだぜ? さ、おやすみ、ひかり」
光里「うん……ありがと、なっちゃん……おや……すみ……」
夏灯「ああ、おやすみ、ひかり。――起きたら、作戦会議しような」
◆シーン:寝室(夏灯の独白)
夏灯「――完全に寝たかな、これは」
夏灯N:腕の中で、すぅ、すぅ、と規則正しい呼吸をし始めた親友を見て、あたしはホッと息を吐いた。
夏灯N:思っていたより、ひかりは不安定になっていた。このわずかな期間に、色々なことが起きたからだろう。あたしの対応が後手に回ったのも、正直悪かった。
夏灯N:最初に、転校生がくると告げられたあの日。あの日から、本当は身構えていなくちゃいけなかったのだと思う。転校生が女の子だと聞いた時点で……それも、東京からやってくると聞いた時点で、警戒度を上げておくべきだった。
夏灯N:だけど、あたしは慢心していた。
夏灯N:だって、もう十年だ。雫久に恋をし、ひかりと出会い、大好きなふたりのためなら、あたしは脇役でいいと決めたあの日から、ひかりと雫久の仲をそれとなく取り持ち続けて、十年が経った。
夏灯N:おかげであたしたち三人の仲は周知の事実になったし、同年代は他校も含めて顔なじみばかり。もうライバルは出てこないと思ってしまった。ここまでくれば、あとは高校に進学するのを理由に、じれったいふたりをくっつけて丸く収まる。
夏灯N:――そのはずだったのに。
夏灯(回想)『いやー、やばいわ。あれはやばい。予想以上の美少女が来ちゃったなー』
夏灯N:しぐれが転校してきた初日、教室でこぼしたのは嘘偽りない本音だった。いくら東京からの転校生とはいえ、あたしらみたいな田舎の芋中学生と、あんなに差があるとは思っていなかった。あんなのは完全に想定外。いや、おそらくしぐれは、東京の中でも上澄みなのだと思うけれど……ともかく、あんな一発逆転の反則カードが今さら配られるなんて、少しも思っていなかった。
夏灯N:こうなってくるとまずかったのが、ひかりがフォロー役に任命されているという事実だ。ひかりは真面目な子だ。託されたのなら全うしようとするだろう。その過程で、あたしはもちろん、雫久とも関わることになるのは容易に想像できた。当たり前だ、あたしがふたりの絆を取り持っているのだから。ひかりと関われば、雫久とも関わる。そういうふうにできていた。
夏灯N:だからこそあたしは、少々強引に首を突っ込んだのだ。
夏灯(回想)『こういうときこそあたしの出番! ちょいと一瞬失礼するぜぇ』
夏灯(回想)『やあやあようこそ山埜さん。あたしの名前は草間夏灯! この子、本橋光里の幼馴染みで大親友!』
夏灯(回想)『で、こいつが腐れ縁の青葉雫久。まあこいつは覚えなくていいや』
夏灯N:あえて名乗りをあげることで、ひかり共々フォロー役に回るのが目的だった。そうすれば、ひかりのサポートはもちろん、しぐれに対しての監視も行える。もししぐれが、変に雫久に近づこうとすれば、びしっと牽制していくつもりだった。……だけどそれも、しぐれが美人過ぎて高嶺の花になったことで、杞憂で済みそうだったのに。
夏灯「いやはや、うまくいかないなあ」
夏灯N:あたしは小声で運命を呪う。神様ってやつがいるなら殴りたい気分だった。このストレスを軽減すべく、親友のサラサラヘアーに手を伸ばす。しぐれにも負けず劣らぬそれを堪能していると、知ってか知らずか、無二の親友はあたしの胸にぎゅうっと身を寄せてきた。途端に、幸せホルモンなのか母性なのか、とにかくあったかくて尊いものが脳から吹き出し、全身を駆け巡る。
夏灯N:かわいい。あまりにもかわいい。
夏灯N:やっぱりこの親友のためならば、あたしは脇役でいい。そう思えた。
夏灯「幸せになってくれよー? この夏灯サマがこんだけサポートしてるんだからさ」
夏灯N:あたしは、親友のかわいい額をこつんと指で小突いた。
夏灯N:作戦を考えよう。いよいよ、あたしという<蛍>の、本気の輝きを見せる時が来たみたいだ。