登場人物
- 夫(男):定年を迎えた男性
- 妻(女):長年夫を支えてきた女性
- 受付ロボ(不問):施設の受付を担うロボ ※兼ね役可
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約2分(652文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
「引っ越し」というテーマで書いた作品です。家の引っ越しと見せかけて……というシンプルなお話になりました。ロボは一言しかないので兼ね役可としています(登録上も男女1:1の台本としています)
ディレクションは特にありません。年を重ねても仲の良い夫婦を楽しく演じていただけたらなと思います。
本文
夫「いよいよか……随分先だと思っていたが、過ぎてしまえばあっという間だった気もするな」
妻「そうですねぇ。でも、いざ引っ越すとなると、少し寂しい気もしてしまいますね」
夫「そうだなあ。長く過ごしてきたし、思い出もある。俺も、少しばかり名残惜しくはあるよ」
妻「今さらですけど、本当に良かったんですか? 私は別に引っ越さなくても……」
夫「前にも言ったが、いいんだ。俺は仕事一筋で、お前にはたくさん苦労をかけてきた。だからこそ心機一転、これからはお前との時間を楽しく生きていきたいんだよ。そのための投資さ」
妻「でも、退職金もたくさん使ってしまいましたし……」
夫「なーに、まだまだ働く気力もある。引っ越しが終われば、すぐに再就職先でも探すさ。それに、俺達は子供に恵まれなかったが、その分貯金には余裕があるじゃないか。どうとでもなるよ」
妻「でも……」
夫「なんだ、まだ不安なのか?」
妻「……いえ、ありがとうございます。ほんと言うと、直前になって、ちょっと緊張してるだけなんです。何しろ、六十年生きてきて初めてのことですから」
夫「そうだな。実は俺も、緊張してる。でも、同じくらい楽しみだ。引っ越したら、海にでもいきたいな。久しぶりにお前の水着姿もみたい」
妻「やだ、お父さんったら! ……でも、そうですね。私も久しぶりにはしゃいでみたいです。……あなたと一緒に」
夫「よし、決まりだ。――じゃあ、そろそろ引っ越しに行こうか」
受付ロボ「いらっしゃいませ。『エクスチェンジ・ニューボディ』へようこそ! ご予約のお名前をお伺いします――」