登場人物
- ソウタ(男):9歳
- マナ(女):17歳
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約7分30秒(2262文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
特にありません。自由に演じてください。
本文
BGM< 悲しい>
ソウタ:引っ越しって…どういうこと? 僕が子供だからって、 勝手に決めないでよ! いつもそうだ…。 僕の気持ちなんて考えたこともないでしょ… 僕は行かない! 絶対、イヤだからね!
SE< 夜の公演でブランコ>
マナ:あれ? ソウタくんじゃない? どうしたの? こんなところで…
ソウタ:マナさん…。 マナさんこそ、こんな夜中にどうして…?
マナ:え、わたし? えー…と、わたしは、 塾の帰り、だよ?
ソウタ:ハハハ…。 マナさんは嘘をつくのが ヘタだね…。 お母さんに、言われてきたんでしょ?
マナ:あー、そうだっかもー…。アハハ…。
ソウタ:大丈夫だよ。もう家に帰るから。 今更どうにもならないことくらい、最初から わかってるんだ。 ちょっと、気持ちの整理がしたくて、 外の空気を吸ってただけだから
マナ:そっか…。 引越し、いつなの? 送別会やらなきゃね!
ソウタ:あした
マナ:あした!? ずいぶん急なんだね!
ソウタ:僕もさっき知ったんだ。うちの両親、 ちょっとおかしいから…
マナ:ソウタくん、お父さんとお母さんのこと、 そんな風に言うの、よくな いよ?
ソウタ:マナさんも、僕のこと子供扱いするの? マナさんは、僕のこと、どう思ってるの?
マナ:どうって…、本当の弟みたいに、 かわいいな、って、思ってるよ?
ソウタ:それじゃ、ダメ なんだ!
マナ:え?
ソウタ:僕は、マナさんのことが、好きなんだ! 弟とか、そういうんじゃなくて! 真剣に、好きなんだ!
マナ:ソウタくん…
ソウタ:マナさんは!? マナさんは、僕のこと、好き?
マナ:… 好きだよ?
ソウタ:じゃあ、結婚してくれるの!?
マナ:え、け、結婚…? 結婚かぁ…
ソウタ:ほら! やっぱり子供扱いじゃん!
マナ:ち、ちがうよ! 結婚する! 結婚します!
ソウタ:ほんとに!? やったぁ ! あ、ちょっと待っててね
SE< がさご そ(ポケットの中をあさる)>
SE< ぴ、ぴ、ぴこん>
ソウタ:これで、よし!、と
マナ:え、ソウタくん? それは、なにをしているの?
ソウタ:えっへへー。 あのね、さっきの音声、録音しておいたんだ
マナ:え、録音!? なんで、そんなこと…
ソウタ:なんでって…。 そりゃあ、僕たち二人の大事な思い出だもん。 それに、あとで、結婚の約束をしたとか してないとか、 もめ事になるのも、イヤだからさ!
マナ:そ、そっかぁ… !
ソウタ:あ、安心してよ! 別にこれで、マナさんを脅そうって、 わけじゃないんだから。 そもそも、同意の上の録音じゃないと、 証拠能力はないし
マナ:やけに、詳しいんだね、 その…証拠、能力…とか
ソウタ:僕、 将来は弁護士になりたいと思ってるんだ。 それなりに収入もあると思うから、 マナさんに、苦労はさせないよ
マナ:へえ、頼もしいね…
ソウタ:でもね、マナさんにも、 それなりの収入は稼いでほしいんだ? ほら、やっぱり、 DINKs (ディンクス)の期間を なるべく引き延ばすことで 世帯あたりの生涯年収 のアドバ ンテージが得られるじゃない?
マナ:ディン…? アド…?
ソウタ:マナさんには、今のうちから しっかり勉強しておいてもらわないとね
マナ:え、うん…
BGM< 不気味、不協和音>
ソウタ:あと…。子供は二人ね。 教育第一で、 二人とも幼稚園から私立の有名校に 通わせるんだ。 それで、住まいだけど、 僕は三十五歳までに独立して、 弁護士事務所を開業するから、 そこから、 半径1km 以内のマンションにするからね
マナ:ええ…ちょっと、そこまで…?
ソウタ:あと、僕が引っ越した直後からの話だけど、 二週間に一度、近況報告のメールを送るから メールを受け取ってから一週間以内に 必ず返信してね
マナ:はあ…
ソウタ:メールの内容で変なところがあったら 指摘するから、 証明できるエビデンスを用意しておくこと
マナ:はあ…
ソウタ:僕とは年齢差があるから、 僕が十八歳になるまでは、人生経験のために、 他の男と付き合ってもいいけど、 絶対、キスはしないこと
マナ:はあ…
ソウタ:それから、LINE に登録する男性は 五人以内にすること
マナ:はあ…
ソウタ:夜二十時には必ず家にいること。 それから、 スマホに追跡アプ リをインストールすること。 お互いの居場所はいつでもわかるようにね。 あと、飲食店でアルバ イトはしないこと。 チャラチャラした男が多いからね。 なるべく、他の人と関わらない、 単純作業系の工場とかでバイトしてね 特に海の家でバイトなんて絶対ダメ だからね。 それから、 膝から上を露出する服装はしないこと あと、おへそにピアスは明けないこと < フェードアウト>
BGM< 切ない>
ソウタ:僕が一通り、語り終わったそのあと、 マナさんは、冷たい目で僕を見て、 何も言わずにその場を去った。なにがいけなかったんだろう? ぜんぜん、わからないよ! やっぱり、大人は信用できない!