灯篭

登場人物

  • ◎私
  • ◎不思議な声(性別不問)

所要時間(300文字あたり1分として計算)

約5分(約1300文字)

台本についての補足説明(ディレクション等)

特にありません。自由に演じてください。文末や接続詞を読みやすいように変えても構いません。

本文

ぼわっと、光っている灯篭に、私は右手を突っ込んだ! ボンッ!
「ぐぁああ!」
物凄い音がして、灯篭が爆発した。肉が焦げる音。激痛。
血だらけの右手を、私は左手で押えた。

――残念……残念……(笑い声)
「む、無理だッ!」
――大丈夫、大丈夫。
「当たり」を見つけ出すまで、どんな爆発に巻き込まれても、あなたの体は崩れないから。

あの声が笑いながら言う。
姿は見えないのに、ずっと、耳のすぐそばで聞こえる声。
私は次から次へと灯篭に手を突っ込んで、中を確認する。

そのたびに爆発が起こる。
炎や破片で体を切り裂かれるのに、皮膚や肉が垂れ下がり、骨が露出しながらも、私は死ぬことができない。

――ほら、何ぼんやりしてるのッ! さっさと続けるんだよッ!
あなたの命令一つで、どれだけの人間が死んだと思っているんだ!
悲鳴をあげる暇すらなかった者も多かったのをわかってるのかい!?

「うぁああああ!」
今度は、私の体全体が燃え上がり、肉を焦がす。
「やるッ! やる……から……」
――ふんッ!

私の体の炎が消えた。ボンッ。
「うぉおッ!」
どれだけ灯篭を探しても「はずれ」ばかり。

闇の中、延々と、無限の星空のように灯篭が広がり揺れている。
――あなたが奪った命の数だけ、灯りが生まれた。
決して消されることのない記憶。この虚無の中に漂ってるのさ。(笑う)
「そんな……」

最初、私はこの声に向かって、
「戦争を終わらせるためには、絶対に、必要だったんだ! たとえ、一発で十万人が犠牲になったとしても!!」
と、死ぬまで誇りに思っていた自分の信念で抵抗していた。

しかし、何千回、何万回もの責め苦の前には、その気持ちも崩れていった。
私のせいじゃ……私のせいじゃない……私のせいなんかじゃない……仕方なかったんだ!
「私のせいじゃない!! みんな戦争が悪いんだッ!!」

私をあざ笑うように、灯篭たちが、大きな波を受けたように、ゆらめいた。