登場人物
- 青年(男):男子高生
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約4分30秒(1360文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
特にありません。自由に演じてください。
本文
BGM<雨音>
SE<傘が雨を弾く音>
青年: 急に出ていくか らさ、驚いたよ。 気持ちは分かるけど、 …… いや、ごめん。俺にはサヤの気持ちはわからないのかもしれない。でもさ、ほら、風邪ひくよ。まだ葬式も始まったばかりだし、戻ろうよ。 …… そっか。そうだよね。じゃあさ、俺もここにいる。それくらいは、許してくれないかな。覚えてるかな? 俺達4人が出会ったのは中学三年生の春だった。俺とケンヂとマナは幼馴染でさ、何かと一緒に遊ぶことが多かったんだけど、そこにサヤが転校してきてさ。あの時はクラス中が大騒ぎだったよな。東京から凄い美人がやってきたってさ。ケンヂのやつもサヤに一目惚れしちゃってさ。マナと一緒に宥めるのが大変だったよ。お前には無理だよ、ってさ。ははっ。サヤも気づいてた ろ? あいつ、自分の気持ち隠すの下手だから。…… でもさ、なんつーか、あいつなりに、心の奥では、ずっとマナのことが好きだったんだよ。マナも、前からそのことには気づいててさ、あいつらが二人でいるときは、なんとなく、そういう柔らかい空気感っていうのがあってさ。いつかは…… 、多分、高校生でいるうちにさ、あいつら、付き合ったりするんだろうなって思ってた。…… うん、わかってる。こんなの、葬式の最中にする話じゃないよな。でもさ、いや、 今だからこそ、サヤには言っておきたいんだよ。いいか、俺は、警察や君がなんと言おうと、ケンヂがマナを殺したなんて信じない。ケンヂがそんな、そんなことをする理由なんて、何もないんだよ。あいつらはうまくいってたんだ。理想的なくらいに。痴情のもつれで殺人なんて、そんなんで納得できるかよ。俺は考えたんだ。なんでこんなことになったのかって。すぐには思いつかなかった。でもさ、だんだん、わかってきたんだ。 過去の記憶を思い出そうとする度に違和感があった。その違和感が、サヤ、君だよ。中三の春に俺たちは出会った、だよな? でもさ、おかしい んだ。君と過ごした思い出が全く思い出せない。君は俺たちの仲間だという認識だけが存在しているんだ。こんなのおかしい だろ。サヤ、君は何者だ? 一体、ケンヂに何をした? 事件があった、あの夜。ケンヂと二人でいる君を見たんだ。夜に見る君はいつもよりも綺麗に見えた。いや、君たちは肌が触れ合いそうな距離で何かを話してた。俺は、君と触れ合っているケンヂを殺したいほど妬ましく感じて、……いや、最後に、何かを囁いて君は一人で去っていった。それからケンヂはフラフラしながら夜の街に消えていったんだ。ああ! なんで俺じゃなくてケンヂなんかと! 俺の方がずっと…… ! なんだ、これ、 俺の方が、俺の方が、俺の方が、うまくやれた。うまく やれたんだ。絶対に。なんで、こんな、サヤ、君がマナを……。ああ、なんだ、そうだったのか。マナを殺したのは俺だったのか。ははっ! ははは! くっくっく…… 。 はっはぁ! ああ……サヤ。次は、誰を殺せばいい?