いちごのプライオリティー

登場人物

  • 夫(男):39歳
  • 妻(女):37歳

所要時間(300文字あたり1分として計算)

約2分30秒(759文字)

台本についての補足説明(ディレクション等)

特にありません。自由に演じてください。

本文

SE<ドアが開いて閉まる>

夫:ただいまー。…ん? どうした? ご飯なら食べて帰るって言っただろ?

妻:…実はねー。…じゃーん! 美味しそうでしょ?

夫:おー。いちごのショートケーキか。

妻:昔、よく一緒に食べてたでしょ? 出先でたまたま目についちゃってさ、

  懐かしかったから買っちゃった

SE<かちゃかちゃ(食器を準備する音)>

夫:そういえば、昔はよく食べてたよな。いただきまーす。

  …ん? どした? 食べないのか?

妻:…ううん。食べる。ただ、ちょっと。

  …あなた、いつもイチゴは最後まで残してたのに。

  一番最初に食べるなんて

夫:え? なんだそんなこと。どうでもいいだろ

SE<かちゃかちゃ(お皿とフォークが触れ合う音)>

夫:そうだ。今度さー。お前の誕生日だろ? なんか欲しいものある?

妻:…何? 急に。去年はなにもくれなかったくせに

夫:悪かったよ。お前も知ってるだろ? 仕事が忙しいタイミングだったんだよ

妻:あ、そう。いいわ。私が欲しいものくれたら許してあげる

夫:ゲンキンなやつだな。いいよ。なんでも言ってみろよ

妻:(ためて)命

夫:は、はあ?

妻:あなたの命、ちょうだい

夫:お、おい。ふざけるな、よ…。…お?

SE<どしーん(椅子ごと倒れる音)>

SE<がしゃーん(お皿が割れる音)>

SE<床をきしませながら歩く足音>

妻:…もう、死んだみたいね。神経毒ってすごいのね

SE<すっ(床に座り込む)>

妻:あなたの新しい彼女がね。電話をくれたわ。わざわざ私に直接。

  ほんっとうに憎らしい。

  …私がね、毒を手に入れたのはもう3か月も前。

  使おうかどうか迷っていたの。それで、今日、イチゴのショートケーキを見かけて

  思いついたわ。…イチゴを最後まで残す、昔のままのあなただったら、

  やめようって。

  強引にあなたからイチゴを奪って、私が食べて、自分が死のうって。

  でも、あなた。

  変わってしまったのね…。