登場人物
- サヤ(女):不問
- アカネ(女):7歳
- 子供ABCDEF(不問):兼ね役可。5〜8歳。
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約5分0秒(1565文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
特にありません。自由に演じてください。
本文
SE <夕方のチャイム>
子供達 「じゃーねー」 「バイバーイ」 「お腹すいたー」 「そろそろアレが出るかもよー」 「明日学校でさー」 「えー違うよー」
SE <ブランコがきいきい鳴る>
アカネ「はぁ… 。帰りたく、ないなぁ」
SE <北風が吹く>
アカネ「寒い… 」
サヤ 「あなたなあに? 子供は帰る時間よ?」
アカネ「あなただって子供じゃない」
サヤ「私はいいの。赤い服を着ているから」
アカネ「なんで赤い服を着てたらいいの?」
サヤ「… あんた、赤い服の噂を知らないのかい?」
アカネ「知らない。… 私、友達いないから」
サヤ 「あ、そう。この公園にはね、赤い服を着た女の子の幽霊が出るって噂なのよ。だから、赤い服 を着ていれば周りから怖がられて、安全ってワケさ」
アカネ「なんで、怖がられると安全なの?」
サヤ「鈍いなぁ。怖がられたら悪い大人も寄ってこ ないじゃない」
アカネ「ひっひっ… 。ごめ、ごめんなさい」
サヤ「な、泣くことないじゃない。ほら、塩飴あげ るよ」
アカネ「… いらない。私も、白い服じゃなくて、赤い服を着てくればよかったな… 」
サヤ「はいはいそーですかー」
アカネ「飴はいらないけど、ちょっとお話ししてもいい?」
サヤ 「いーよー」
アカネ「私ね、夏祭りで、金魚すく いで、金魚もらっ て、嬉しくて… 。でもね、餌をあげるのができなく て、それで… 」
サヤ 「それで?」
アカネ「それで、金魚が、金魚が、死んじゃったの… 」
サヤ 「それで?」
アカネ「それでおしまい。お母さん、金魚が死んで悲しくて泣いちゃって。私、もう家に帰れない」
サヤ「そっか」
アカネ「私、家に帰れないの… 」
サヤ「あんた、名前は?」
アカネ「アカネ」
サヤ「そう。アカネ。私はサヤ。 よく聞いて欲しいんだけど、アカネは勘違いしてるよ」
アカネ「勘違い? 勘違いってなあに?」
SE <北風が吹く>
サヤ 「アカネのお母さんが泣いてるのは、金魚が死んだからじゃない。アカネが死んだからだよ
アカネ「え… だって… 」
サヤ「時系列がめちゃくちゃだよ。幽霊ってのはみんなそうなのかね。金魚が死んだのは、アカネが死んだ後じゃないか。幽霊に餌があげられるわけないじゃないか」
アカネ「だって、お母さんはアカネのこと嫌いだから」
サヤ「どうしてそう思うんだい?」
アカネ「だって、私、お母さんと 約束破って… 。遅くまで公園にいて、それで、それで、… 」
サヤ「それ以上は言わなくていいよ。もう知ってる からね。ニュースで観た。 でも、実物は迫力が違うねぇ。白いシャツが出血で真っ赤じゃないか。そこの破れ目から出てるやつは肝臓かい?」
アカネ「これは小腸だよ。たまに押し込まないとだんだん出てきちゃうの」
SE <ぐちゃぐちゃ(小腸を押し込む)>
サヤ「いいことを教えてあげよう。お母さんは怒っ ちゃいないよ。ただ、アカネが死んじゃったことが 悲しくて苦しくてたまらないのさ。それこそ、死んじゃいそうなくらいにね」
アカネ「そんな… 。お母さんが死んじゃうのはやだよう」
サヤ 「そうかい… 。それは良かった。本当に良かったよ。…それじゃあ、さっさとウチに帰りな。そん で、お母さんにお別れを言って、またここに戻ってきな。いいね?」
アカネ「… うん。わかった。… でも、遅い時間に公園に行ったらいけないんじゃないの?」
サヤ 「そうさねぇ。それは困った。… そうだ。ウチで着替えてくればいいよ。そんな汚れたシャツじゃなくて、ピアノの発表会の時のような、真っ赤なドレスを着てくるといい。…ほら、西日が差してきた。綺麗な茜色だよ。成仏するにはうってつけじゃないか」