登場人物
- 男:井戸掘り職人。
- 女:井戸の修理を男に頼む。辺鄙な所で、飯屋をやっている。井戸が壊れて、休業中。登場人物名(性別):人物についての説明
所要時間(300文字あたり1分として計算)
約17分(約3200文字)
台本についての補足説明(ディレクション等)
特にありません。自由に演じてください。(何かある場合は編集し、ない場合はこの()部分は削除してください。基本的にこの部分の使い方は自由なので、台本を使う方向けに伝えたいことがあればここに描いてください)
本文
女「……どう? 直りそう?
これじゃ料理が作れやしないのよね」
男「あぁ、なんとかなりそうだが……
この井戸の壊れ方、老朽化にしては
なんだか……」
女「あなた、体が傷跡だらけだね。
井戸掘りの仕事って、そんなに危険なの?」
男「あぁ……まあ、ちょっとな……」
女 「井戸掘りの前は、何をやってたの?
……て、ごめんごめん、余計な詮索して悪かったね。
お客に、いろいろ尋ねるの
ほんとに、よくないわね私……」
男「俺は、客じゃないからな。いつもは掘る側で掘られ慣れてはないが…なんて……
おぃ、これは笑ってくれ。井戸掘りジョークだぞ。
まぁ、しかし、なんだ? あれだなぁ?
物好きなんだな。こんな所に飯屋を開くなんて……」
女「あら、ここはダンジョンと町の境界線だから、お客は結構来るのよ?
あなたは、冒険者じゃないのによくここまで来てくれたわね?」
男「まぁ…な。
うーん……にしても、ここ飯屋だよな?
なんで薪が無いんだ?
普通は積んであるもんじゃないか?
地下室でもあるとか?
んなわけねえか。こんな小さな飯屋に」
女「……薪あつめんのも、こんな所だと手間でねぇ
ちょっとした工夫を……
……ッて、もう! そんなことどうでもいいからさ!
お客のためにも、早く直してよ!
食料だけでなくて、ここの井戸、大事な水の補給ポイントでもあるんだから。」
男「水がねえのは、シャレになんねえな……」
女「『渇き』は地獄ね」
男「ああ……水が無いのは、何よりも恐ろしい……」
女「……わかるわ」
男「昔……ある砂漠で迷った。それだけだった。
食料はあったが、水が尽きた……
もうろうとなって
あっという間に立てなくなっちまった」
女「……残酷だよね。そういうの……」
男「服に白く汗の塩がざらざら浮いてきてる。
昔は、俺も、まあ、な
実は
結構なヤバイモンスターも殺れる狩人だったんだが、
渇きの前じゃ
一般人と何ら変わらねぇ、気合いだけじゃなんともならないもんだった……」
女「だから、こんなとこまで来れた、のね…」
男「戦って死ぬんじゃなくて、こんなふうにみじめにゆっくり死ぬのかと思ったら
泣けてきたんだが、泣いてるはずが水分が体にないからな。涙が流れなかった、」
女「……でも、あなた
今、ここにいるわよね。なんで助かったの?」
男「……猿さ」
女「猿?」
男「日が陰ってきたとき
猿がやってきて、俺の荷物を漁りだした。
涙すら出ない状態だったからな
もちろん追っ払う力も出なくて、
ぼんやり見てるしかなかったんだが、大事な塩肉を食べられだしてなぁ……俺の大事な酒のツマミが……って何にも出来ないくせに思ったんだ」
女「この期に及んで、酒のツマミの心配とは傑作だね」
男「まあ、頭がおかしくなってたのかもしれないなぁ。
ただな、その時、猿がいるってことは、水場があるんじゃ? って気づいて。
しかも奴らは塩肉なんか食ってやがる。
てことはだっ」
女「ぁあ!喉が渇いて、水が飲みたくなるッ!!」
男「おぅよ!
猿は、口を開けてハアハアしだした。
これが、最後のチャンスだって
俺はどこから出したかわからん最後の力を振り絞って、猿を追いかけ、オアシスに辿り着いた!」
女「危機一髪ッ!」
男「……それ以来、この仕事をするようになって
狩人はすっぱり辞めた。
お陰で、水だけは困らねえし、ちったぁ人様の役に立つってぇーもんだ……
ん? な、なんだッ!?」
(大音響と、ドラゴンの鳴き声)
女「はぁ! まったく……
一応、結界張ってるのに、ときどき破ってくる奴もいるのよねぇ……困ったちゃんだわ。
井戸をさらに壊されたりしたら
たまったもんじゃないわ!」
男「ぉ、おい! あれ、ドラゴンじゃねえかッ!」
女「……光の神レクスラディア
我が槍となりて、敵を貫けッ!」
(轟音)
男「…(女と瞬殺されたドラゴンを見比べ息を呑む)」
女「……ふぅ、ドラゴンちゃん討伐成功っと。
これで当面、肉料理の材料に事欠かないかしらね。
ただこの子、捌くの面倒なのよね……(ため息)」
男「……あ、あんた、飯屋の前は何やってたんだよ?」
女「ん?」
男「それに、こんなとんでもない量の肉、保存できるわけがないだろッ!」
女「あぁ、そこは氷の精霊ちゃんを召喚して……」
男「(額に手を当てて目を閉じて言う感じで)
ちょ、ちょっと待て……まさか、あんた、食材を煮たり焼いたりするのも……」
女「肉を消し炭にしないくらいに、火炎魔法を調整するの、結構、大変だったりするけど、何か?」
男「おいおい!
待てよ、な、ちょっとまて。
ドラゴンを瞬殺できるほどの魔法使いが、なんだって、飯屋なんかやってんだ?」
女「…………あなたと同じ……」
男「俺と同じ?」
女「ある地下の深い所のダンジョンで仲間と一緒に迷いに迷ってね。
狭い地下迷宮の中では、得意の爆炎も使えやしない。
その上、強力な呪いがかかっていて、
攻撃や防御以外の高度な魔法は使えなかった。
ぁ、ルート探査とか、テレポートとか
そういう魔法ね。
だから
襲ってくる奴を、凍らせてはしのぐしかなかった。
熱と冷却の力を操れたから
結露を利用して水だけはなんとかなったんだけど……
食料が……ね…
運が悪かったのか何なのか
敵がアンデット系……ゾンビやらスケルトンばっかりで食べるものがなかった…」
男「あ゛ぁー(同情の感じ)」
女「戦いで負けたっていうより、飢えに負けましたって感じで私以外全滅。
こっちがアンデッドどもの食料になっていったのよ」
男「……地獄絵図だな。よく助かったもんだ」
女「私の方は
やっぱり運に見放されてたんでしょうね
ラッキーなことは無くて、もう最後は力業。
あなたの仕事の逆。掘り上げたの……」
男「掘り上げたぁ?」
女「迷宮の隔壁を上へ上へ掘っていったの。
攻撃魔法で隔壁を崩して、崩落した瓦礫は防御魔法で跳ね返してってのを、延々繰り返したわけ。
仲間は全滅して、フレンドリーファイヤーの恐れも無くなってたし」
男「地下迷宮の深い所と言ったよな?
しかも魔法を弱める仕掛けのある所だろ?
まったく……何千スペルの呪文を唱えたんだ……
考えたくもねえ作業量だな(ため息)」
女「嘘偽りなく血を吐きなら脱出したわよ(ため息)
それで生き延びて今ここにいるけど
食べられてく仲間をみたりなんだりしたら
いろいろ嫌になっちゃったのもあったし
『もう、ひもじい思いをするのは、たくさんッ!』
って思って飯屋を開いたわけ。
本当に困るぐらいお腹を空かせた人がたどり着けて
喜んでくれるような場所で」
男女「……(二人とも笑う)」
男「……お代はいらねぇや。
あんたの心意気に敬意を表したぃ……」
女「あーもぉー男って! そういうかっこの付け方するから、嫌いよ!
お代は、ちゃんととっとくもんだよ!
お互い
客から大金ふんだくれる商売じゃないでしょ?」
男「……あんたには、かなわねえなあ(笑う)」
女「それより、修理が終わったら、一緒に飲まない?
猿に導かれなくても、ここにはたんまり水分とゆー名の酒があるよぉ?
お客にはあんま、こういう過去の話できないし、お互いの冒険譚、一緒に深掘りしてくってのはどぅ?」
男「……あんた、ジョークは下手なのな。
……まぁいいや。楽しそうだし、塩肉よりよっぽどうまそうだしなあんたが倒したドラゴン。
けどな、井戸掘りに深掘りさせたら長いからな?
覚悟しとけよ?」
Spetial Thanks 人外薙魔様!